SHORT REVIEW

見どころ・ポイントをサクッとCHECK!

極上文學『人間椅子/魔術師』

江戸川乱歩の世界観を

★★★★

不気味とはまさにこの舞台のことを言うのだろう。
2011年に初演を迎えた、著名な日本文学を演劇で表現する舞台となる本格文學朗読演劇 極上文學の第11弾目の作品。 江戸川乱歩が著した『人間椅子』と『魔術師』の2つの物語を1つの舞台で表現し、それぞれのもつ不気味さを融合させた朗読演劇。 三面舞台での演出が空間の不気味さを作り出し、薄暗い舞台の上で情景を説明する朗読には緊張感が漂い、 出演者の動きや台詞回しが舞台を形作っていた。物や人を表現する具現師たちが影にもなり、情景にもなる。 「魅せる」ことを重視した演出で立体的な空間を作り上げ、文学そのものの世界観に観るものを引き込んでいく。 特に今回は三面舞台での演出をしたことで、より奥行きのある立体的な空間で、様々な演出を取り入れてより 不気味な江戸川乱歩の世界観に引き込まれた。 観終わったあとにも、何か気味の悪さが後を引く極上の舞台であった。(網走に咲く花)

ミュージカル「八犬伝-東方八犬異聞-」二章

何のために生きたいと思うのか

★★★★

漫画雑誌「エメラルド」で現在も連載中のあべ美幸原作の伝記ファンタジーのミュージカル化。 今回は二章と銘打っており、初演は昨年八月行われた。 「生きたいと思ったそのとき、何を願ったか」が今回のテーマだ。 信乃と荘介の小さい頃交わした約束。道節の妹を思う気持ちと雪姫が払った代償。夜叉姫の愛情と仇のために心臓を受けもらった毛野。 妖をその身に宿すことで命を永らえさせる。 大切な人や信念を思うとき、力強い歌声が響く。演出的に舞台の上段と下段をうまく使い、妖と宿り主の対面を成功させている。 雪姫の羽織やロープを使った演出など繊細さが光っている。イケメンキャストだけでなく、女性陣キャストの華やかさや歌唱力、Phamtomsの妖艶なダンスも見どころ。 何の予備知識もなしに臨んだが、見事に八つの玉を巡るこれからの物語に引き込まれた。(syvankmier)

『ダイヤのA TheLIVEⅢ』

これぞ野球を最大限に楽しめる唯一の舞台!!

★★★★

シリーズ3部作目にして未だ甲子園にすら行っていないという作品。予選だけでここまで盛り上げられるというのは、 もちろん原作の力は大きいが、演出と役者の力も大きいのだろう。1つの打席だけでも何度も変わるアングルや、劇場全体に余すことなく配置されたキャスト、 野球作品ならではの爽快感のある音響など、細かい箇所にこの作品を堪能しきれる工夫がなされている。 ストーリーは、甲子園をかけた予選の一幕で、主人公に初めてライバルとなる存在が現れる。それぞれの思いが交差して、いつのまにか敵を応援していたりして。 予選で負けてしまうには、技術もキャラの魅力もあまりにももったいないチームで、 来年はまたこのグラウンドで会えるといいなと思った。(網走に咲く花)

『ママと僕たち』 ~たたかえ!!泣き虫BABYS~

赤ちゃんたちが繰り広げるコミカルなファンタジー!

★★★★★

昨年、『ママと僕たち よちよちフェスティバル ~もっかい!いち!に!~ 』と題して2作を連続上演した『ママと僕たち』シリーズの最新作!毎回このシリーズではママのピンチを赤ちゃんたちが大人になって救っていく。「おもちゃの国入口」駅のなかにある保育園“夢の汽車ぽっぽ保育園”に集まる赤ちゃんたちには悩み事が。しかし、彼らは大忙しのママを見守ることしかできない。おもちゃのピカール君に導かれ、出会った一台の大きなおもちゃ。そのおもちゃは、ただのおもちゃではなかった。それは、コインを入れると夢をかなえてくれるおもちゃだったのだ! 今回が『ママと僕たち』シリーズ初鑑賞だったが、笑ってばかりだった。2時間に笑いが詰まっていて、公演タイトルとは裏腹に大人のジョークも炸裂。また、デーモン閣下の役柄が本人、デーモン閣下の要素もあるし、普段見られないようなデーモン閣下の要素もあってすごく楽しめた。劇中の歌にまで、コメディ要素が入っていて会場からも笑いが絶えない作品。個人的には、歌のお兄さんでお馴染み、今井ゆうぞうさんのコミカルな演技が印象的だった。(山奥の大学生)

ミュージカル『bare』

自らをさらけ出すこと

★★★★★

2000年にロサンゼルス ハドソン・シアターにて幕を開け、NYのオフブロードウェイへの進出も果たしたミュージカル『bare-ベア-』。若者の性とアイデンティティへの葛藤をリアルに描く衝撃をそのままに、2014年12月の日本公演に引き続き、再び日本での公演が始まった。 ストーリーの中心にいるのは、卒業を間近に控えたセント・セシリア高校の生徒たち。 見た目を気にする女子たち、人気者のそばでいつも一番になりたいと思う男子、そして、誰にも言えない秘密を抱える2人の男子。 ピーターは親友と言っていたジェイソンとは本当は恋愛関係にあることを、母親に隠し続けることに耐え切れず、ジェイソンに話を持ちかけるが、それをきっかけに2人の心は離れていく。 全寮制のキリスト教学校と教会を舞台にした作品であるがために、厳格なルールの下におかれ、罪を犯した若者たちが許しを請う姿が、若者の苦悩をリアルに描き出す。 思春期に誰しも一度は感じたであろう大人と子どもの間での苦悩を繊細に表現し、その一方で、すべてがうまく行っているかのようにみんなで楽しく踊って歌う。そんな演出がよりリアルに描き出しているように感じた。 生バンドでのBGMが、熱演するキャストの感情をさらに引き出していく。 世界各国で上演された『bare』は観たことはないが、日本公演もまた、世界の人々の心に響く公演になっていると確信している。(網走に咲く花)

ミュージカル『刀剣乱舞~阿津賀志山異聞~』

時代とものを超越した刀が暴れまくる!!

★★★★

過去の名刀たちが擬人化する大人気ゲーム『刀剣乱舞』を舞台化した今作。主のもとに集められた刀たちが、歴史的事実を書き変えてしまう時の歪みを、それぞれの時代に飛び込んで修正し、もとの歴史に戻すというストーリー。時代を超えた刀たちがチームを組んで戦に向かう姿は、ゲーム内で編成をおこなって、自分好みのチームを作っていく部分を連想させる。本作は、歌や演技はもちろん、やはり殺陣が見どころだ。時空を歪めて過去を変えてしまう敵たちと戦い、倒すことで歴史を修正する。刀にはそれぞれ性格や特技があり、それが物語に人間味を付け加えていくわけだが、殺陣にも性格や特技が表れており、一斉に戦うシーンでは、どの登場人物を見ればいいのか迷ってしまうほど、それぞれ個性的で、動きが洗練されている。
阿津賀志山異聞とサブタイトルにもある通り、阿津賀志山の戦いの時代に向かうので、源義経の守り刀であった今剣と、武蔵坊弁慶の使用していたあの薙刀、岩融は登場する刀の中でも特に重要な役柄である。擬人化する前に使われていたそれぞれの主と直接対話するシーンは、この舞台だからこそできる、不思議なシーンだ。特に今剣は、俊敏に動き回る幼い性格をしていることに加え、守り刀として義経に肌身離さずにいたことから、義経への思いが強く、義経とのやりとりはとても印象的だ。
『刀剣乱舞』シリーズとしては第2弾となるわけだが、前作を観た人も、観てない人も新鮮な気持ちで楽しめる作品に仕上がっている。(山奥の大学生)

『終わりのセラフ』The Musical

舞台で体感する真のダークファンタジー!

★★★★

 集英社「ジャンプスクエア」で現在も連載中の『終わりのセラフ』がミュージカル化を果たし、主演の百夜優一郎を佐野岳が演じた。人間達は大切な人の命を奪った吸血鬼への復讐のために戦うが、力の差が圧倒的に違い、絶望的な状況に陥るという真のダークファンタジー。 吸血鬼に支配されるという世界観とミュージカルの配合が、幻想的な舞台を作り出している。前半はコメディー要素も多く、キャラクター達が歌って踊る楽しい演出となっていて、何より女性キャストたちの声や動きが可愛らしく、途中でアニメを見ているような感覚になる。後半は、過去と現在を 交錯しながら徐々に一人ひとりの闇が暴かれていくが、それぞれの物語を丁寧に上手に一つのストーリーに盛り込められていた作品だった。吸血鬼だけでなく、己の心の闇とも戦い続ける姿がこの『終わりのセラフ』というダークファンタジーの見どころであり、実写ミュージカル化を果たし、より一層深く追求した作品になったと言える。(網走に咲く花)

残酷歌劇『ライチ☆光クラブ』

年の瀬に舞い込んだ、本年度1番のモンスター舞台!!

★★★★★

○古屋兎丸原作の漫画「ライチ☆光クラブ」を、丸尾丸一郎が脚本を担当し、自身も役者・脚本家としても活躍する河原雅彦を演出に迎え、光クラブの帝王ゼラを中村倫也が演じる。これだけの才能が集まれば面白くなるにきまっている。そう思い身構えて観劇したのにも関わらず、想像の遥か上をいく面白さ・・・というよりは衝撃を受けた。会場に入れば螢光町に来たかのようなセットが広がっており、異様な雰囲気を醸し出している。 冒頭、東京ゲゲゲイによるダンスパフォーマンスから始まり、光クラブメンバーによるダンスは寸分のくるいもなく披露され、圧巻の一言。ワンシーンワンシーンが丁寧に作りこまれており、そこには紛れもなく光クラブのメンバーが存在していた。ありのままを描くから残酷なシーンや性的な描写が多く、過激な言葉も飛び交うが、途中からは帝王ゼラのたたずまいや、そのカリスマ性が何よりも恐ろしく感じるようになる。14歳という多感な時期を独特な感性や特殊な表現で表しているが、ジャイボ(吉川純広)が後半に発した一言がこの楽園がいつまでも続かないことを示しており、少年時代の終わりを告げる。 舞台でしか見ることのできない最高の表現方法がすべて詰まっているのが、残酷歌劇『ライチ☆光クラブ』。これを見ずに2016年は迎えられないですよ。 (KB)

『夜の姉妹』

「男女入替劇」の良さが最大限生かされている舞台

★★★★

劇団リリパットアーミーⅡの20周年記念の際に上演されたゴシックホラーの名作を、オリジナルと同じく脚本・演出をわかぎゑふが担当している本作。やはり注目すべき点は、男優と女優の配役をそっくり入れ替えた「男女完全入替劇」で演じられる事だろう。 彩乃かなみさん演じるラインハルトは男優が演じるよりもさらに男らしく、キザな台詞でもすんなりと受け入れられ、原嶋元久さん演じるマリアは、女優が演じるよりもチャーミングで、その動きは見ていてどこか微笑ましい。男女を入れ替えることで、通常ならば鳥肌が立つような台詞や動作でも、逆にその部分が際立ち、丁寧に演じられているからこそ惹きつけられる。これが男女入替え劇の強みの一つである。 そんなある意味、難しい役どころに挑戦している役者たちの中でも、山本裕典演じるデュマのストーリーテラーとしての役割が、本作をただのお笑いに走らせず、ゴシックホラーとして成立させており、本作における彼の力は絶大である。
追伸:今ではあまり見ることのなくなった円形劇場。独特の良さがあり、クラブeXで観劇される方はそちらも是非楽しんでいただきたい。(KB)

『遥かなる時空の中で6』

迫力ある胸キュン舞台!

★★★★

ゲームソフトから始まり、アニメ、舞台と、人気を博し続けている『遥かなる時空の中で』シリーズ。主人公となる女子高生が大正時代に似た異世界へ時空移動するというストーリー。 舞台の一番の見どころは、意外にもプロローグの後に行われる人物紹介。プロジェクションに次々と名前が映し出され、その横で本人たちが役の特徴となる動きを見せるのだが、この流れがかっこいい。もとが恋愛アドベンチャーゲームとなるこの作品は、ストーリーの構成も面白いが、要所要所の細やかな演出が時にゲームと重なり、自分でこのストーリーを作り上げたいという気持ちになる。登場人物それぞれに秘密があり、魅力があり、そこを全て出し切れた舞台になったと感じる。 また、予想以上にアクロバティックな動きに、時折観客席から声が漏れていたのは、今作が単純な胸キュン舞台ではないという何よりの証拠だと思う。 個人的な注目人物は、情報屋として中立の立場をとる小説家・里谷村雨(田中稔彦)。役柄としてもおいしい立ち位置にいたが、ギャグは一番キレが良く、ちょっとしたハプニングにもあくまで役として臨機応変に対応していたのは、これこそ舞台と感動を覚えた。 ゲームソフトと共に、舞台版もシリーズになっている『遥かなる時空の中で』シリーズ。一度見てしまえば、今後も見逃せない作品となるだろう。 (網走に咲く花)

『BOY BAND』

なじみの曲で本格ミュージカル!!

★★★★★

40以上もの国で上演されているという、イギリス人劇作家が手がけた作品が遂に日本上陸!「5人のボーイバンドが、苦悩、衝突、挫折の果てに最高のステージへと駆け上がる人間ドラマ」というベタな設定に、日本のプロダクションがナンバーを選曲・構成しているため、多くの人が楽しめる舞台となっている。 なんといっても一番の見所は歌声。メインボーカルの声はもちろん、ハモリやバックコーラスも素敵で聴き入ってしまう。特別派手な演出はないが、舞台ならではのテンポといい、度々スクリーンで流れる映像といい、メインの歌とダンスといい、2時間半もあったのに、まったく飽きを感じさせないどころか、観客のテンションがどんどん上がっていく公演となった。それは、選曲が近年流行の音楽から昭和のヒット曲まで幅広いこと、暗転するたびに変わる衣装、そしてキャラクターの魅力的な個性がはっきりと表れていたことなどの細かい演出を大事にしていたからだと思う。 観客席にはペンライトを持っているお客さんが多数。彼らが歌うたびに本当のライブみたいに振っているから、私も欲しくなった。ライブ形式でなじみの曲が次々と流れる舞台。これほど舞台にのめり込める作品はないだろう。キャストが最後の歌を歌う頃には、きっとメンバーもしくはスタッフの誰かを好きになっていると思う。 (網走に咲く花)

本格文學朗読演劇「高瀬舟・山椒大夫」

文學と演劇の完璧な融合!!

★★★★

2011年から始まった本格文學朗読演劇。好評に好評が続いて、ついに第9弾となった。森鴎外原作の「高瀬舟・山椒大夫」を題材にした今回の舞台は、文学と演劇をとても心地よく融合させた朗読劇となった。会場は満席。開始5分前からのキャストたちの”仕掛け”により、すでに笑いが起きる。舟に見立てた大きなセットだけが置かれているという実にシンプルな舞台上に、ひっそりと浮いている文字とライトが幻想的な雰囲気を醸し出している。 舞台の端でピアノが奏でる音が物語を進めていく。『高瀬舟・山椒大夫』の本来持っている切ないストーリーに引き込んだかと思うと、物語の途中で突然調子を変えて、会場は大爆笑。しかし最後は原作に忠実に進み、ラストは哀愁感を漂わせて観客の涙を誘った。 朗読劇ということで、もちろんキャストの手には朗読本があり、その本が形を変え多種多様な使い方をされる。しかし形を変えるのは本だけではない。その一つひとつの仕掛けが細かく、なんとも幻想的で時折一枚の絵を見ている感覚に陥る。 今回の見所の1つ、「マルチキャスティング制」は公演ごとにキャストの組合せが変わる。この朗読劇は、違うキャストだったらどんな演劇になるのだろう…。観終わってからの想像が止まらなく、次公演日のキャストを確認してしまう。(網走に咲く花)

しっぽのなかまたち4

笑って泣けて、会場全体が一体となれる希少な朗読劇!!

★★★★

総勢24名のキャストが日替わりで出演し、イヌとネコをテーマに全3部で構成されている本作。今回で4回目の公演となり、毎回様々なキャスト・飽きさせない演出により公演を重ねるごとにファンが多くなっている人気朗読劇である。 まず注目していただきたいのが、キャストが使用する台本のカバーが凝られている点である。カバーからしっぽが飛び出していたり、お金がはみ出ていたりと演じる役柄に沿った作りがなされている。うーん、かわいい(笑)よく見ればセットもかわいい…。 また、森大造氏によるギターの生演奏が様々なシーンでスパイスとなっており、物語に彩りを与えている。うーん、心に染みわたる曲。声も良い…。 このように目と耳でも十分楽しませてくれる本作だが、大きな特徴として「客席参加型朗読劇」があげられる。それを実際に目の当たりにし、おおいに納得した。(その内容は伏せますが)会場全体が笑いに溢れていた。 もしかしたら朗読劇が苦手な方もいらっしゃるかもしれないが、本作は目と耳、そして笑いと涙、さらには会場全体で素敵な時間を共有でき、帰り道にフラリと歩いているイヌやネコに耳を傾けずにはいられなくなる、そんな他にはない「客席参加型朗読劇」である。
追伸:出演キャストによって同じお話でも印象がガラリと変わる本作。これこそ2度、3度見ても楽しめるリピーター率100%の朗読劇ではなかろうか。(KB)

七夕ジャンクション

江戸の便利屋?いやいや江戸の必殺仕事人!!

★★★★

どんな時代にも悪は存在し、弱き人々を苦しめる。時は江戸時代。例にもれることなく悪が存在し、江戸に住む人々に恐怖を与えている。 そんな苦しむ人々の駆け込み寺こそ本作の主人公:蔦屋重三郎(米原幸佑)がリーダーを務める璃珠夢人(リズム人)である。その他にも、町一番の歌舞伎役者・歌麿(原嶋元久)、紅一点のミネコ(新良エツ子)、ギャグの機関銃オヤジ(岩井ジョニ男)、人形遣の次朗吉(大久保祥太郎)、絵師の玉三郎(杉江大志)など個性的なメンバーが登場する。 本作がただのコメディー全開の作品にとどまらず、最後まで引きつけられる要因のひとつとして、各々のサイドストーリーがきっちりと盛り込まれていることがあげられるだろう。特に玉三郎の花魁:朝霧への一途な想いは観る者の感情を一気に引き寄せ、玉三郎の父親への秘めたる想いは、本作のラストとなる山城組との抗争へ向けて気持ちを高揚させてくれる。もちろん蔦屋と山城の関係も気になるところだが、脇を固めるキャストに注目することによって、本編をより一層楽しむことができるのが本作「七夕ジャンクション」である。
悪は何度くじいても出てくる厄介な存在。なので是非シリーズ化を熱望いたします。
追伸:カーテンコールで山城長明役の谷口賢志さんがおっしゃってたオリジナル原作を上演する意味。それは役者がゼロの状態で役に向き合えるまたとないチャンス。これぞ役者冥利に尽きるというやつですね。そんなキャスト達の生き生きとした表情もお見逃しなく。(KB)

Blood-C The LAST MIND

ハイキック巫女を侮るなかれ!

★★★★★

2011年のオリジナルテレビアニメーション(ストーリー・キャラクター原案:CLAMP、制作:Production I.G)の放送以来、劇場版の公開を経て着実にファンを獲得し続けてきた人気タイトルが満を持しての舞台化。人を喰らう存在「古きもの」と戦う主人公・更衣小夜が、因縁の相手・七原文人を追って東京に向かうという、 テレビシリーズの後にあたるストーリーだが、舞台の見どころはなんといっても、アニメシリーズでも視聴者を魅了した殺陣。それを今回は映画『ハイキック・エンジェルス』への出演が記憶に新しい、業界内では武田梨奈に続くアクション女優との呼び声高い宮原華音を筆頭に、 映画『ガチバン』の南圭介、舞台『龍が如く』で主人公・桐生一馬を演じ、運動神経の高さに定評のある滝川英治、更に、映画『ハイキック・エンジェルス』で宮原と共演した青野楓など、実力派のキャストが顔を揃え、アニメシリーズに劣らぬ迫力で熱演! その度肝を抜かれるほど迫力のあるアクションと、プロジェクションマッピングや奥行きのあるステージを有効活用したセットによる演出が見事に調和し、圧倒的な推進力を持ってしてあっという間に物語は終盤へと向かうのだが、個人的には主人公の父親、唯芳を演じた滝川英治の渋い声と、和装での佇まいに 終始ウットリ・・・。また、黒田(伊阪達也)と紅斑(田中稔彦)のコミカルな掛け合いがいい感じのスパイスとなり雰囲気を和らげるなど、盛りだくさんの内容に天晴れです! (寺住タカマル)

覆面

覆面

身近に孕む危険性を、笑いと共にお届けするその心意気に拍手!

★★★★

いやはや『覆面』とは便利な道具である。Twitterやらブログやら、見渡せば実に多くの人が自分を隠して言いたいことを言っている。人はそうやって『覆面』になると強気になる。なぜなら、実害を受ける可能性が低くなるからだ。本作に登場する、「経験」「知識」「編集」「まとめ」と、各々の長所を集約し作り上げた4人の男女から成る天才覆面作家『向田國夫』も実に強気で自信家で強欲だ。自分達が書く本は完璧だと思い込んでいる。しかし、そんな彼らのもとに突如現れた『向田國夫』よりも完璧な人物『枯枝由美』によってその自信は完膚なきまでに打ち砕かれる。 しかし、この作品の本質は「自分を隠すことの愚かさ」を語っているのではない。そもそも人はなぜ覆面を被るのか。それは「自分を隠したい」という理由が大半を占めるのだろうが、「自分を隠したいと思ったことさえ、知らず知らずに隠してしまう」ことの危険性を、そしてそんな人間の愚かさを、この作品では教えてくれる。今回は、第8回「ルナティック演劇祭」の中で行われた公演でした。また公演があれば是非ご覧あれ! (寺住タカマル)

メサイア-翡翠ノ章-

血の繋がり以上の“絆”を見せつけた、最強の「メサイア」

★★★★

今回の物語のメインは、海棠鋭利と御津見珀のチャーチ卒業試験。にも関わらずオープニングでは、いきなり舞台上に現れる鋭利の慰霊。残された珀は新しいメサイア(まさかのあの人)と共に卒業試験を遂行するよう命を受けるのだが。。。そこから“今”と“過去”を遡り、磁石の両極が引き寄せられるかのように、徐々に鋭利の死の謎が明らかになっていく。その「え?まさか、そんな。。。」的な展開には、観客に瞬きすら許さない脚本の妙が光るが、なんといっても「絶対に死なないジンクス」を持つ鋭利と「自分とメサイアになった相手は必ず死んでしまうジンクス」を持つ珀が、苦しみ、迷い、もがきながらも、お互いを信じ、守り、そして道を切り開いていく姿には、思わず目頭が熱くなってしまう。 こんなにもお互いを理解し、心を許せるメサイアに巡り合えた二人に、ちょっぴりジェラシーを感じたりなんかもして。(寺住タカマル)